近年は航空機の利用が手軽になり、インターネットで容易に現地の情報を得られるようになったことで、どんどん海外が身近になってきています。
海外に行く目的も観光旅行や出張や駐在といった一時的な滞在だけではなく、生活拠点を海外に移す長期滞在や移住も増えてきています。
気候や文化に惹かれて、
物価の安さや今後の経済発展に期待して、
日本でのしがらみから解放されたい、
節税スキームの一環として 等々…
移住先は目的や思惑で様々ですが、近年は東南アジアを選ぶ方が増えています。中でもタイは暖かく、経済成長著しく、特にバンコクはインフラが整った大都市であり、親日的な国民性ということもあり人気です。
タイ在住の日本人は在留届を出している人だけでも7万人を超え、総数は10万人を超えるとも言われています。
知り合いが住んでいる街に引っ越すくらいの感覚で移住できそうな気もしますが、あくまでも海外なのでそれなりの準備や手続きが必要となります。
そこで、タイ移住にあたりどういった手続きが必要かまとめてみました。
日本ですること① タイ生活の下準備
タイ移住後の生活のアウトラインを決めておかなければなりません。
住まいをどうするか
住まいはとりあえずホテルやサービスアパートメントに滞在して賃貸物件を探すのであれば、それはどのエリアで家賃はいくらか、コンドミニアムを購入するならいくらくらいかといったことです。
特にコンドミニアムを購入する場合、大金を海外送金する必要がありますので送金方法を事前に確認する必要があります。
タイ移住で必要になる一時金と毎月の生活費をどうまかなうか
移住にかかる一時的な費用と日々の生活費をどのように賄うか、移住をギブアップして帰国する方の多くが金銭的な不安によるので、やはりお金は最重要項目です。
タイでの生活費は基本的に日本より安いですが経済成長より上昇傾向にあります。そして、タイ料理は結構お安いですが、日本食がメインだと日本にいる時よりも高くつくので注意が必要です。
医療や保険
持病や定期的に処方を受けている薬がある人だと希望する医療が受けられるかは重要です。
タイの医療水準は高いですが、医療設備が整ってしかも日本語が使えるのは限られた高級病院です。
タイで公的保険制度を外国人が利用するのは難しいですが、高級病院は仮に公的保険制度を利用できても保険対象外です。民間医療保険に別に加入するのが一般的です。
滞在するためのビザ
観光目的の30日までの滞在ならビザは不要ですが、移住するとなると何らかのビザは必須となります。もちろん帰化してタイ人になればビザは不要ですが、非常に高い条件を満たさなければなりません。
以前に記載しましたが、ビザは何種類かありますが自分に該当しそうなビザは限られているはずです。
【過去の記事】タイの基礎知識⑬ タイでのビザの種類
ビザの種類によっては申請しても必ず取得できる訳ではなく、申請に時間と手間と費用が掛かり、さらに期限があるのでそのたびに更新手続きが必要です。
しかも、ほとんどのビザはシングルエントリーなので期間内でも何らかの理由で国外に出ると期間が残っていても再度申請手続きが必要になります。
インターネット上にはビザラン(滞在期限が迫ったら一旦隣国に出て入りなおすことでノービザで滞在し続けること)の情報が結構ありますが、規制が強化されているので注意が必要です。
日本ですること② 日本出国時の手続き
日本を出国する前に不要となる日本での各種契約を廃止します。
携帯電話の端末は海外でも使えることもありますが(SIMフリー、もしくはSIMロック解除端末)国内の通信業者との契約は移住先では不要です。自動車保険や電気、水道、ガスといった契約も同様に不要です。
支払い以外では、郵便が旧住所に届いた際の転送先を国内に指定したり、直近の健康診断書を用意したり、役所で戸籍等の証明書を余分に取得したりってとこでしょうか。
そして大切なのが日本の税金の手続きです。
住民税
市区町村役場に海外転出届を提出すると日本の住所がなくなりますが、住民税はその年の1月1日に日本に住所があると課税されるので、本年分の住民税はまだ納付書が来ていなくても全額支払い義務があります。納付書が届いていない場合は自動引き落としにするか納税管理人を選定する必要があります。
海外転出届を提出した翌年分からは(年内に戻ってこない限りは)住民税は課税されません。
健康保険料
国民健康保険は海外転出届を出すと脱退することになりますので保険料は徴収されません(もちろん、医療費は10割負担になります)
これまで社会保険の健康保険に加入していた場合、基本は脱退ですが、希望する場合は任意継続することもできます。
公的年金
年金保険料はこれまで厚生年金だった人でも移住を機に退職ということであれば健康保険と違い任意継続制度はありません。
海外移住後も国民年金であれば希望すれば加入することができます。なお、支払いをしない場合もその間はカラ期間として受給資格期間になりますが、年金額には反映されません。
また、年金を受給中の方はタイに銀行口座がある場合、そちらで年金を受け取ることができます。その旨の手続きと、年に1回現況届を提出する必要があります。
所得税
所得税は住民税が課税されなくないと自動的に徴税されない訳ではなく、所得税法上の非居住者に該当しない限りはこれまで通り全世界の所得が課税対象となります。
非居住者の要件は、国内に「住所」がなく、国内に1年以上「居所」がないことと、若干、曖昧な線引きになっています。
また、非居住者に該当したとしても日本で発生する所得には原則、課税され、報酬や対価の支払い者は租税条約や日本の法律を確認の上、支払い時に源泉徴収が必要だったりします。
固定資産税・都市計画税
これらは非居住者になろうが変わらず課税されます。
固定資産税をはじめ課される税金の通知書や納付書を役所や税務署は海外までは送ってくれません。日本での送付先を定めたり、別に納税管理人を選定する必要があります。
移住後に日本で些末な手続きを忘れて心残りになったり、最悪引き返したりしないようぬかりなくやりましょう。
タイに来てからすること
まずは生活基盤を整えることが先決です。
携帯電話のSIM契約や住まい、仕事をする方はその環境を整えるということになります。
それは各々がタイに来た目的にも大きく関わることで百者百様でしょう。
ここでは万人に当てはまりやすい普遍的な事項について記載します。
タイの公的保険・年金
タイにも日本同様公的保険&年金制度がありますが、どちらもタイで就職して社会保険に加入する必要があります(もしくは健康保険はタイ国籍を取得することでも加入可)。
また、仮にタイの年金に加入したとして、日本とタイは社会保障協定を締結していないので一本化はできません。日本とタイの年金を比較検討して、どちらか一方だけ払うか、どちらも払うか、どちらも払わないのいずれかの選択をすることになります。
移住後の収入
タイ移住後はタイ国内で発生した所得はもちろん、タイ居住者となれば全世界での所得が所得税課税対象となります。
居住者の要件は暦年で180日以上タイに居住することです。
ただし、居住者になっても、日本で発生した所得は日本で源泉徴収されたりするので、確定申告時に外国税額控除により二重課税分を調整します。
しかし、タイの居住者になる要件と日本の非居住者になる要件は必ずしもイコールではなく、日本で納税義務がないかどうかは難しい判断になりますのでご注意ください。
90日レポート・ビザの更新
タイに90日以上連続して滞在する外国人は入国管理局に90日レポートを提出する必要があります。手続きは滞在76日目~97日の間に行います。提出を怠ると罰金が科されますのでお気を付けください。
また、ビザは期限ごとに更新する必要があるので、滞在中は常に気を払う必要があります。
日本にいたときのように何の手続き不要で無限にいられることのありがたみを実感することになりますが、海外で暮らすというのはこういうことなのです。
まとめ
タイ移住には皆様それぞれ異なる目的やスタイルがあるでしょうから今回記載したのはあくまでも基本的な手続きということになるでしょう。
各々の事情によって必要な手続きは異なってきますので、自分のケースではどうなるか十分お調べいただいて抜かりなくご準備いただければと思います。
なお、よりスムーズで快適なタイ移住のためにタイランドエリートという制度もありますので手前味噌ではありますが、一案としてご検討いただければ幸いです。